肺は空気を出し入れしながら外気から体内に酸素を取り入れ、体内の二酸化炭素を排出するという働きをしています。
空気の出し入れが十分に行えないと、こうした肺の役目が果たせなくなります。
呼吸機能検査では、検査機器(スパイロメーター)に接続されたマウスピースを口にくわえ、指示の声に合わせて息を吸ったり吐いたりして、肺に出入りする空気の量や速度の測定などを行います。
この検査によって得られるデータをグラフにしたものを「スパイログラム」といい、肺活量などの数値とともに、「努力呼気曲線」を記録する際のデータからは「フローボリューム曲線」も得られます。
スパイロ検査は、肺気腫や気管支喘息などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の早期発見、診断に欠かせないもので、単に肺活量を測定するだけの昔ながらの肺活量検査ではCOPDの診断はできません。
咳や痰の多い人、息切れのある人、喫煙者などは、特にこの検査を受けることが勧められます。
肺の生活習慣病COPDとは
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、喫煙習慣が主な原因となる肺の生活習慣病で、以前は肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていました。
日本では疫学調査から、糖尿病患者数に匹敵する500万人以上がCOPDに罹患していると推計されていますが、実際に治療を受けているのはわずか約22万人(厚生労働省統計2005年)に過ぎません。
COPDは徐々に進行する疾患で、進行すると息切れから日常生活に支障を来し、更に進行すると入院加療を余儀なくされるまで重症化し、最後には死亡に至ります。
いかに早期診断し、適切に治療するかで、患者さんの予後は大きく変わってきます。
日本におけるCOPD死亡者数
厚生労働省の統計によると2008年のCOPDによる死亡者数は15,505人で年々増加傾向にあります。
COPDは20年以上の喫煙歴を経て発症する病気です。
日本でも20年前の喫煙率上昇の影響がCOPDの死亡率を高めていると考えられます。
いまだ喫煙率が高く、喫煙開始年齢が若年化している日本では、今後さらに患者数が増加することが懸念されています。
これまで、男性の喫煙率が高かったため死亡数も男性の方が多いですが、最近では女性の喫煙率も高くなりつつあるので、今後は女性の死亡率が増加すると考えられます。
また、女性の方がCOPD発症リスクが高いという報告も発表されています。
日本におけるCOPD死亡者数(2008年)
(出典:厚生労働省 人口動態統計 2008年)
<h2日本におけるCOPD有病率>
順天堂大学医学部の福地氏らによる大規模な疫学調査研究NICEスタディ(2001年発表)の結果、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%、患者数は530万人と推定されました。
しかし、2005年の厚生労働省患者調査によると、病院でCOPDと診断された患者数は約22万3千人です。
つまり、COPDであるのに受診していない人は500万人以上いると推定されます。
多くの人々がCOPDであることに気づいていない、または正しく診断されていないことになります。
また、日本人のCOPD有病率は喫煙者と喫煙経験のある人の方が非喫煙者よりも高く、高齢者になるほど高くなる傾向があることがわかりました。
日本におけるCOPD有病率
(出典:福地ら、NICE Study. 2001年)
スパイロ検査を受けましょう
最近スパイロ検査を受けたことのない方は、健康診断や人間ドックの際に検査を受けるか、スパイロメーターという検査装置のある内科で受診して検査を受けてください。
スパイロ検査には食事制限や特別な準備は必要がありませんので受診すればすぐに検査が受けられます。
当院にも電子式のスパイロメーターがございます。検査をご希望の方はご相談ください。
なお、スパイロ検査装置では肺年齢も測定できます。
「肺年齢」とは一秒間に吐ける息の量(一秒量)から、標準の方に比べて自分の呼吸機能がどの程度であるかを理解して頂くための指標になります。
40歳を過ぎたら、年に1回は肺年齢を知るためにスパイロ検査を受けましょう。